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此処はこのブログの管理人・黒斗の一室。日々の雑談を記している時もあれば風月投稿所にて行っているPBC『Babel』の話をしている事も在る、そんな一室に御座います。

2025 . 02
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    HN:
    黒斗
    性別:
    男性
    趣味:
    料理全般(専ら食べる方だけどもね)、酒、煙草、コンビニで週刊誌の立ち読みは既に日課、紅茶、等等
    自己紹介:
    この画像みたいな悪党面も悪どい笑いもしていないので注意。髭と顔が濃いのは認めざるを得ない
    最近は特に肩身の狭い喫煙者。
    ついったー
    水球時計
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    【 宴もたけなわ 】
    一言※相変わらず陰鬱としております、あと、ちょっとだけ長め





    ――……ごぼっ、ごぼっ。
    常に人が行き来して、専門用語を口々に零して、手に持つレポートにお世辞にも巧いとは言えない字を走り書く。
    壁という壁には、本来施されていたであろう白い塗装が見え隠れするまでにパイプが張り巡らされ、
    床という床には、本来施されていたであろう白い塗装が禿げてしまうまでに何度も踏みつけられて、
    パイプは部屋に所々に存在する、大人数人は詰め込めるであろう大型のカプセルに繋がっている。中には絶えず、〝中のもの〟を制御する為の薬品、生かす為の酸素や栄養が送られ続けていた。
    靴音はカプセルの前を走り回って、制御するべきコンソールを弄くっては何かの成果を上げようと必死になって議論を交わす。
    まるで、初めての演劇を披露する為に浮かれている小学生達のように賑やかで――
    まるで、締め切り間近の作家程に余裕の無い光景はいっそ、楽しそうにも見えて――
    けれど、そんな感情とは程も遠い、白衣を来た者達全ての者が浮かべる歓喜とも悲哀ともつかぬ気味の悪い表情。
    言葉として表現するのに最も適切だと言えるそれは、狂気にも似たものだろうか。そのせいで不気味以上の空気を生み出しているその場所。
    ――……ごぽっ、ごぼん。
    薬液が流れる音、栄養を送り込まれる音が、響く。
    それに一喜一憂、彼等は本日の日誌を付けて行く。
    楽しいそうだ。
    何をそんなに嬉しそうなのかを問えば、彼等は悲しそうに言葉を返すだろう。

    『私達のやっている事はとてもとても、許されることではないのだから』

    悲しいそうだ。
    何をそんなに悲しそうなのかを問えば、彼等は嬉しそうに言葉を返すだろう。

    『私達のやっている事はとてもとても、常識的にやっていては辿り着けないようなことなのだから』

    倫理的に。常識的に。人道的に。道徳的に。
    決して許されない筈の所業に、良心が痛むと彼等は言って見せる。
    しかしだ。しかしだ。
    まるで魔法のようにそう言い噤んでから、こうも語って見せるだろう。
    それでしか辿り着けぬ領域に到達することが出来るのだから研究者としての自分が歓喜している、と。
    その繰り返しをしている中でもう、何が嬉しいのか、何が悲しいのか、判断がつかなくなってしまった者が此処に居る。いや、その判断をする事を止めてしまった者達だけが、此処に居る。そしてまた、その行為を繰り返していく。
    此処は、多かれ少なかれ確実に存在し続け、隠蔽された闇の中で蠢く狂気の一角。
    ソレイユ南辺境地区の更に過疎が進み、街も村も集落も存在しないような位置に在る、広大な森を持つ私有地の更に奥。とある企業がリゾート地を作ろうと辺りを買い占めたはいいが、其の会社は倒産――権利だけが誰に手を付けられる事も無く放置された、何の価値もない土地。
    と、そういった拙いストーリーによって用意された場所の何処かから狂気の地下へと繋がっていく。
    滅多に人が立ち入らない其処の移動手段ですら専用に手配した小型飛行機や、ラクナスから持ち込んだセキュリティレベルが軍上層部級にID設定された物質転送装置で、徹底的に出入りする者の足跡を消し去り、そもそも其処に出入りする者全てに仮の戸籍・住居・仕事まで用意する徹底ぶり。
    オーナーは其処までして、研究内容の全てを隠したい。
    研究者達は其処までして、研究内容を突き詰めたい。
    それさえ合致してしまえば他の事など如何でも良い。
    何時から始まったのか?
    何時終わるのか?
    何のためなのか?
    何に使うのか?
    もうそんな事はどうでも良くて、行為に酔う研究者達は延々と、今日も『カプセルの中のもの』を好き勝手に弄っては、時折身の毛をよだつ悲鳴さえ上げる『彼等』に無関心のまま、それをレポートに刻もうとして……
    今日だけは、麻痺した脳に滑り込んできたものに違和感を覚えて、同時に背筋が凍った。
    湿度が変わったわけでも室温が変わったわけでもなく、しかし寒気は肺まで満たす冷気は理性ではなく本能が察知した危機によるものだとは、命を弄くっても、命を遣り取りした事等とんと無い彼等の誰に分かるだろうか。
    背筋の寒気が末端にまで行き届いたのにたいした時間も掛かりはしないが、それを見計らったかのように響いたのは、若い男の声だった。
    「はァい。其処まで、其処まで、ちゅ~も~く。注目、皆さんこっち向いて下さーい」
    一切の冗談さえ口に出来無いような空気の中を、冗談としか思えないような底抜けた明るい口調と、コンソールが刻む計測音を馬鹿にするようなものを孕んだ壁をノックする音。
    研究者は幽鬼のように、窪んだ眼窩と淀んだ瞳で、冒涜とさえ言える横槍へと目を向ける。
    ……正確に言うならば、目を引き付けざるを得なかった。
    知らない声だとか、ふざけた態度だとか、
    何故知らない者が自分達に声を掛けるのだとか、
    セキュリティがあるから自分達が知らない者が居る筈が無いとか、
    そんな事ではなく。もし振り向かなかったのなら、例え振り向いても結果が変わらなかったとしても、訪れるであろう悲惨な運命がコンマ数秒早くなると、そう感じたから。
    自分達の脳に直接刻み込むような冷気を発しているのが、その声だと直感的に感じたからに他ならない。
    「あァ、全員注目しました? オーケィ? 結構ですとも、えぇ。
    それじゃあ、今度は動かないで下さる? 其処な紳士も、其処のご婦人も」
    単調にノックを刻んでいた掌を止めて、無遠慮に人々を指差すその掌全ては、何かを殴り殺したかのようにべとりと血で濡れている。
    この研究室へと入るための扉に背を預けているその向こう側には、カプセルの全てを制御するコンピューター室があり、此処からでも強化ガラス越しに見える。
    其処には、
    拳で殴り殺されていたり、ナイフで切り殺されていたり、掌で握り潰されていたり、銃弾で撃ち殺されていたりする同僚の姿。
    と。
    それを無言かつ無音で処理している複数人の影が見えた。
    その複数人全てが容姿端麗を絵に描いたソレであり、無機質な唇であり瞳であり、首に光る制御装置を認めれば、かなり精巧に作られたLPである事が伺える。
    それを指揮する立場であろう、派手かつざんばらな青い髪と、透き通ったような青い瞳と、其の前に申し訳程度に乗せられている丸く小さいファッション用のサングラスを付けた青年。よくよく見てみれば掌だけではなく、コートの裾、ブーツにも転々と血糊が飛び散っている。
    精巧過ぎるLP達を率いて自分達を、この状況で推測する限り間違いなく自分達を殺そうとする者。
    それに嫌というほど研究員達には、心当たりがあるからこそセキュリティも守衛も万全を期していた筈なのに、警報一つならさず此処に居る彼等の名は、
    「ロード・オブ・アビス。生ゴミ処理係総務、及びアビス氏直属のギャルゲーアドバイザーのシェリル・ヴァイザードと、申します。あァ、色は付いていませんけれど本物ですぜ?」
    後半はふざけているのか、何かの暗号なのかを研究員達が知る術は無いが、彼はやはりそう名乗る。
    敵が多い自分達を真っ先に、国家権力もお構い無しに潰しに来る組織こそがロード・オブ・アビス。一度標的を定めた以上どんな手段を使ってでも、標的を刈り取る世界最恐の首狩り集団。
    「マザー・ブラック嬢が所有するラボの一つとお見受けして、相違はありませんか? つってもまァ、書類は揃えちゃったし、もう貴方達以外生きてる人居ないけど」
    シェリルと名乗ったその男は、張り付いたような笑みを浮かべながら周りを見回し、うんうん誰にともなく頷いた。
    さらりと口走った事の壮絶さも、何処か冗談に思えてくるのだから不思議だ。この施設にどれだけの人間が居るか正確に把握しているのならば、余計冗談にしか聞こえない。
    「第三、第四研究室は今ぐちゃぐちゃにされてる途中、第二は今さっき私等がやっちゃいましたし、後は此処第一をぐっちゃぐちゃするだけなんだよねー」
    麻痺した脳にも滑り込む程に驚異的な殺意は、にこやかに笑って見せる。
    「此処は最初に潰しておく予定だったのですけれども思ったよりセキュリティがうざくてね、先に逃げ道事潰しておきました。良かった良かった、バレなくて」
    いっそのこと一思いに、知らぬ間に殺されればまだ苦痛を知ることも無いだろうに、彼はわざわざ無駄話を続けて、何時殺されるか分からない恐怖を強いる。
    ごくりと生唾を飲んだ次の瞬間か、恐怖に駆られて背を向けた瞬間か、せめて一矢報いようと動いた瞬間か。
    殴り殺されるのか切り殺されるのか撃ち殺されるのか握り潰されるのか。
    彼等の麻痺した脳に、ゆっくりと人間らしさが蘇るのを待つように、まるで舞台挨拶でもするように大仰に手を広げて、シェリルと名乗った青年は続ける。
    「まァ、何だ。散々殺ッてから言うのも何なんですが、好きじゃないんですよ、殺しなんてのは。好きな方も居ますが、私はとりあえずそうじゃない。
    だってそうでしょ? 絶対怨まれるもの。貴方達の親類だったり。恋人だったり。先生だったり。上司だったり。破壊活動もしてるんで十中八九マザー・ブラックの怒り買う事請け合い。
    出来ればこんな仕事御免被りたかったし今回ばかりは拒否権あったけれど、そんな私でも、思わず殺したくなる理由があれば殺っちゃったりするそんな山間天気みたいな?」
    先程から彼等を指差し続けていた血塗れの指が漸く動けば、その指先が指し示すのはカプセル、否、カプセルの中身。
    視線も外して其処へ向けるものだから、ついつい、彼等もカプセルの中身を今始めて見るかのように見る。
    その中に入っていて、今も人が手を触れずとも勝手にAIが勝手にコンソールを動かして研究され続けているソレ。
    若かったり老いていたり。
    男性であったり少年であったり。
    女性であったり少女であったり。
    老若男女様々な彼等彼女達は今もカプセルの中で眠っている。
    恐らく目覚めた時には。さて、今でさえ既に人としての意識はあるのか如何か、その身体は一部だけ、もしくは全部が他の何かと差し替えられている実験体達。
    浚われたり買われたりして、此処に連れて来られて。意識を持つことさえ許されずに魂ごと弄ばれている実験体達。
    「例えばそう、あんな感じでもう滅茶苦茶やりまくって、無茶苦茶やりまくって、造られた実験体達を見たときとか?」
    血に塗れた拳が、血を握り潰してぐちゃりとグロテスクな音を立てる。
    「例えばそう、そんな実験体達がデータサンプルの為に外に出されてたりして、偶然私が出会っちまって排除かましたときに、最後の最後で人の意識取り戻して、ありがとうとか言われた時とかー?」
    血塗れの拳を思い切り振り乱しては、天へ目掛けて何かを掴もうとする、仕草。
    「例えばそう、それが何の偶然か、美少女大好きな私に対する天からの当て付けかってぐらい、その実験体が可愛い女の子だったとかー?」
    同時に光の奔流とでも形容すべきか、袖に仕込まれたラクナス製の『箱』と呼ばれる超小型物質転送装置から、呼び出された物質の構築情報が展開されて構築されていく様は、まるで光を操って一つの物体を顕現させているようにすら見える。
    それは、十字架だった。全長は二メートルもあり、横幅・厚さ共に彼の身体を大きく越した、その全てが目に痛い程の白に漂白された、十字架。
    中央に位置している、デフォルメされた髑髏を髣髴とさせるような透かし窓へと導かれるようにその指が握りこまれて、勢い良く、地面へと落とされる。
    重く腹の其処まで響く、衝撃音。大きさから予想をつけられる重量を遥かに上回るソレは落とされただけで床を深く陥没させ、床に亀裂を走らせ、弾けたパイプからどろりとした何かが勢い良く噴出する音を趣味の悪いバックミュージックに、それは降臨する。

    「そりゃ私じゃなくとも不愉快な気分にはなるだろうよ」
    「あァ、個人的理由で失礼。だけれどまァ、悪くない最期だとは思わない?
    これが完成しようがしまいがどの道アンタ等は、二度と娑婆には戻れ無い。それどころかあのブラック嬢の事だし、最期は実験材料行きなんてやりかねないし、どうせなら此処で派手にぶっ散れ」

    髑髏のような透かし窓を掴んでいた掌は、その透かし窓ごと真横に半回転。
    十字架上部の短い部分が、獣が欠伸をするような要諦を以って開かれればその中身は超大型の砲身と、傍目から見ても十分に分かるミサイルの弾。
    十字架下部の長い部分が、それに倣って戦闘態勢を整えるように広げられればその中身は小口ではあるが何十個と並ぶ銃口と、回転用のマニュピレーター。
    ミサイルランチャーとバルカン砲。決して小さいとは言い難い箱体でさえまだ容量が足りないような装備を備えたそれの名は、今は無い。
    あまりの重量と生産性の悪さ、そして何より惨い殺し方が思う存分に出来る程の性能を問題視されて遂にはテストモデルのみで生産を終了された、個人兵装ながらに戦略兵器級の武器。
    超重量である筈のソレを片手で引き上げて、鞠でも弄ぶかのように回転されれば先ずはコレだと言わんばかりに、機関銃の銃口が彼等に向けられ、

    『Good Night』

    一発目は人間の悲鳴を引き千切る。
    二発目は化け物のガラス管を打ち抜く。
    三発目はその彼等をゆっくり眠らせる為に放たれる。
    数え切れない程に射出されていくソレ等は忌まわしき記録ごと消し飛ばす。
    銃声と硝煙と爆炎ついでに悲鳴をスパイスに加えた乱痴気は誰にも何処にも、気付かれない。



    ・Afterwards


    「めーでー、めーでー、ナガ――失敬。宗主アビス。此方〝レイヴン〟、声紋認識はもう済んだ? おけ。報告しようと思いまして」
    静か過ぎる廊下にいっそ無粋な程音を立てて歩く靴音と声。付随するのは、ジリジリと葉を燃やす煙草の音。
    「終わった。けど弾が足りなくなっちゃったんで補充宜しく。うん、またよ。ハッハッハ」
    全弾使い切っちゃったに決まってるじゃない。
    能天気にさらりと言ってみせる声に続いて受話器から響いてくる、経理の苦悩。
    「コレ火力はあるけれど弾の規格も消費も半端無いし。あァ給料から天引きしようとしたら辞めるからな」
    かつては、無愛想な研究員が無愛想な守衛に一瞥くれてタイムカードと会員証を押していた改札を一蹴りで破壊しながら歩みは進む。
    もう警報も鳴らなくなったシステムに一瞥も加えず、吹っ飛んでいく破片に視線を遊ばせながら話は続く。
    「こんなに尽くしてくれるサラリーマンには当然、必要経費ぐらいさらりと出してくれる人の良い上司が、え、もういいって? さっすが宗主、話が分かるね。ん? 五月蝿ェ。テメェんとこの娘と一緒にすんな。あそこまで奉仕精神あるわけ無ェだろ」
    楽し気に会話しながら、肩と顔で電話を挟みつつ通路にぽいぽいと雑に手袋を棄てれば、べちゃりと重く湿気った音を立てている。
    手袋がそうなのだから、手もすっかり汚れてしまっている為に除菌ティッシュで手も拭いて、それもぽいぽい。薄青一色が朱に交じらせて、廊下を汚していく。
    「これから帰還するので、適当につまみとビールでも用意してくれると尚嬉しい。一緒に飲みましょうよ、アビスの中で酒飲めるのアンタぐらいしか居ないし。
    何、平気だって。幾らレッドさんでも、仕事帰りのサラリーマンの慰安に付き合うぐらいは許してくれる、筈。筈」
    大事な事なので二回言いました。有事の際にはアンタを盾にして自分は逃げる。
    ふざけんなーと割と本気で悲鳴を上げている受話器を一度上空に放り投げている間に、血塗れのコートも脱ぎ捨てて放り捨てる。キャッチ。また放り投げて、コートの裏にまで浸透してしまって幾分か血に汚れたシャツも脱ぎ捨ててから、キャッチ。
    「それは兎も角として。帰還時刻は32時間後を予定。途中で階梯の更新しなきゃいけないんでね、えぇ、そろそろ更新時期なんですよ。今回も下げられず上げられないでしょ、派手な仕事もやってないし、コレは表に出ないし。けれど今回だけですぜ、コレに参加するのは」
    気紛れのように参加した戦闘員に全滅させられた研究員も浮かばれない。
    冗談交じりに返ってきた言葉に肩を竦めながら、作動していない自動ドアを無理矢理抉じ開けて小型物質転送装置へと身を置いて暗証番号を入力。ほぼ一瞬で無機質な廊下から、夜と星が頭上で(田舎だけに非常に美しく)瞬く専用ヘリポートへと転送されれば、その向こうで待っているヘリへと歩いていく。
    「隠蔽工作もほぼ終了。
    目撃者もゼロ(にした)。
    情報が漏れてる可能性も無いね、システムは間違いなく全部停止しているし。というわけで殲滅作戦はこれにて終了ですよ、えぇ、お疲れ様でした」
    縁に腰を掛けてから、待機しているLPに防音用のヘッドホンを貰って耳に掛け。そのままの状態で旋回音五月蝿く上昇し始めるヘリ。
    携帯のモードをTV電話にしたあと、カメラを夜の森へと向けているシェリル。
    空いている手で何かの合図をするように、パチンッ、と良く響くスナップ音。
    それに反応して操舵を握っているLPが、手に持っているボタンを押し込んだ。
    同時。
    遠く、深く、暗い場所で地表にさえ軽い地震を起こすほどの振動と、威力が強すぎたのかヘリポートに置いてあった小型物質転送装置まで爆炎を上げて吹っ飛ぶ程の熱量が巻き起こった。
    盛大に爆破されている研究所の熱は森を焼き始め、三時間後には綺麗に更地になっている事だろう。それをカメラに映しながら、フィルターまで焼き切れた煙草を眼下の暗がりへと投げ捨ててから、漸く長いデスクワークを終えたサラリーマンのようにくたびれた欠伸を一つ。こう零した。
    「お気の毒に。ま、何だ。アビスだけなら兎も角、オレの機嫌まで損ねるアンタ等が悪いのさ」

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