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此処はこのブログの管理人・黒斗の一室。日々の雑談を記している時もあれば風月投稿所にて行っているPBC『Babel』の話をしている事も在る、そんな一室に御座います。

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    黒斗
    性別:
    男性
    趣味:
    料理全般(専ら食べる方だけどもね)、酒、煙草、コンビニで週刊誌の立ち読みは既に日課、紅茶、等等
    自己紹介:
    この画像みたいな悪党面も悪どい笑いもしていないので注意。髭と顔が濃いのは認めざるを得ない
    最近は特に肩身の狭い喫煙者。
    ついったー
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    『狼が狙う獲物は、雲の上』 中
    ※三つに分けた小話の二番目になります※







    「迅く答えろ。貴様、アマジークだな? 〝砂漠の狼〟アマジーク・ファンド。下賤の稼ぎ屋が何故此処に居る」
    「おいおいッ。それが年長者に対する口の聞き方か? ッたく貴族ってェのはこれだから嫌なんだ。どいつもこいつも手前に頭下げるのが当然だと思ってやがる」
    ともすればそれは思わず、膝を屈してしまいそうな圧力を持った声だった。
    それに対して、耳元で蚊でも飛んでいて鬱陶しいと言うような不機嫌な顔で応対するアマジークと呼ばれた男。
    確実に狙ったわけではないにしろ、万が一にでも掠れば手痛いダメージを頂く事もあっただろう槍の一撃。それを眉一つ動かさず見送った事と言い、何処か生物的に欠陥でもあるのか。そう言いたそうなデリクの不機嫌そうな顔が、より一層不機嫌そうに眉根を寄せていた。
    「貴族として此処に立つのならば兵隊でも引き連れよう。オレは唯一人で此処に居」
    「貴族の坊やと議論するつもりぁ無ェんだわ。けれどま、行動力は流石と行っておこうか。よく見つけたもんだ」
    言葉を遮る軽い口笛。
    馬鹿にでもしているような口調の中にも感心の色を乗せては笑み浮かべ、
    「目的はコレだろォ? オレもそうなんだろうが、オレと話していた相手が気になって仕方無い」
    そう言って通話終了されたまま蛍光を放っている携帯電話を取り出していて。それを、投げて渡した。
    不機嫌な顔の中に困惑の色も浮かべてそれを受け取るデリク。何のつもりかと問う前に笑みを浮かべた男はこう言った。
    「で、幾らで買う?」
    即金で頼むよ。なんて、もう一つ携帯を取り出しては自分の口座番号を見せている。振込みの仕方は即金から後日受け取りまで、なんて営業トークも交えている始末。
    困惑の色をますます強めて、何か理解の範疇の外にでも居るような生き物を見る目付きをしているデリクに、アマジークこそが不思議そうに首を傾げた。
    「何だ? 盗聴してたんだろ? で、会話内容からミラを如何こうしようとしてる輩が居そうだから、携帯を調べようとしている
    なんだかこのままじゃ力付くで取られそうなんでな。おじさんもいい年だから動くの億劫なんだよ。だから金で解決して貰おうかと」
    そんな事を実に不思議そうに言っている男に対して、さしもの豪傑でもそろそろ馬鹿でも見るような目になっていた。交渉の仕方は勿論だが、聞いていた限りは電話口の向こうとコイツは暫定的とは言え依頼主と仕事請負の関係に聞こえていた。それを行き成り売り払おうというのだろうか、この生き物は。己に恐怖し命乞いのカードとして情報を売るようにも見えず、主に対して恨みを持っていそうにも見えないから、より不可解だ
    「待て。色々と聞きたいこと」
    「ノーカウントだ。オレの依頼主の話だろ? 契約に折込済みだ、と此処まで言えば分かるだろ」
    詰まる所依頼主と請負人との関係に違う所は無い。それと依頼主の素性に関しての守秘義務はあるが、後は個人(アマジーク)の裁量に任せるということか。たとえそれが依頼主に辿り着く可能性があるとしても自分が喋らなければ万事が可。だからといって即効に主を裏切るか、いや、この調子だと雇い主はソレを了承してしまっているのだろうか。
    「オレが金を払わない可能性は?」
    「金を払わない理由が無いだろ?」
    「……オレがこれを持ち去るという可能性は?」
    「無いねェ。こーんなあからさまな施しを受けて乱舞するような性質に見え無ェ。今更突き返すのもそうだ、少々の金で買えるもんをわざわざ労力に挿げ替えるような文無しにも、馬鹿にも見えんしィ」
    「……。……オレが貴様を絞り上げるという可能性は?」
    「下賤な稼ぎ屋っつったのは誰だっけ。世間一般で言う所の、限り無く真っ黒な犯罪者の言葉に誰が耳を傾ける? そんな言葉で主を吐いたとして、誰が信じる? 白を黒にしたってその場は凌げるが、それだけだ。主が有権者だった場合どうする気だよ、無茶すると懲罰隊が動いちゃうぜェ」
    幾らなんでも、コレは無い。無いが口惜しい事に、色々と模索はしても拒むに足る理由も見つからないと来ている。
    行き成り商品を投げ渡す馬鹿な行動ですら、自分の性格を知られた上での工作か。下手に携帯を受け取ってしまった時点で話は軌道に乗っていて、あとは報酬に至るまでの道均しをするだけと来た。
    「で?」「300万」「700万」「350」「700」「400」「700」「450」「……650」「550」「650」「……650か」
    そして結局、不確定かつ恐らくは電話口の主を探る為に必要なものの欠片以下しか残っていない端末を、それでも欲しいのを見越されて、まるきり無視はできない金額で毟り取られた。
    ますます不機嫌そうな皺を寄せては懐から携帯を取り出して操作をして数秒後には、アマジークの端末に入金の知らせが来ている。
    それを見て、やっほーぅ、とか嬉しそうに声を上げている男を、先程までこの男を侮ってしまっていた自分を戒めて油断無い視線を送るデリク。
    S級犯罪者〝砂漠の狼〟アマジーク・ファンド。懸賞金額68億7千万。
    協会から斡旋された仕事を横から掠め取っては勝手に遂行し、依頼者から金銭を受け取る非合法ハンター。金に汚く何にでも手をつけ、禁猟区での無断狩猟・密売から麻薬の売買から非合法売春の斡旋。酷い場合はその市場を拡大させ肥大した後に其処をひき潰して裏金を掠め取る等、悪い噂を上げるならばキリが無いその男は成る程。噂通りだったというワケだ。表の業界からは勿論裏の業界からすら恨まれているこの男がこうして平然としている裏には、恐らくはこんな手練手管で手出しできない要因を突きつけられているに違いない。
    先程とは打って変わって一挙手一動足を監視するような視線に関心を示す事も無く、アマジークは己の端末に入っている入金情報を確認し終えた後は、
    「さ、それじゃオレは此処等で退散させて貰おうかねェ。金も貰ったし」
    自前の携帯用フォークを懐から取り出して、焼き蕎麦をぐるぐると巻き上げて口の中に放り込み、物の数秒で数百グラムはありそうな量を嚥下している。
    その後に立ち上がっては身を翻して、立ち去るべく第一歩を踏み出し、しかし第二歩で止まってしまった。
    振り向きこそしないが目線だけは横へと遣って、溜息をついている。
    デリクが自分に向けて剣先を突き付けており、分かり易いぐらいに殺気を放ってはコレ以上進むというのなら後ろからでも攻撃を仕掛けると物言わぬ声で宣言しているからだ。
    「最後に一つだけ答えていけ。このまま向かう先は、ミラだな? 手を引く気はないと見える」
    「誰も手を出さないと言った覚えは無いがねェ」
    主の情報を売っておいたクセに、主から仕入れられた仕事はこなして更に一儲けしようなんてなんて男か。
    こうなるのなら最初から力付くで端末を奪ってしまえば良かったなどという愚痴もさておいてデリクは己が剣を一振りしてもう一つ威嚇をしておく。
    このまま進めば間違いなく後ろから斬られるのだから自らアドバンテージをくれてやる謂れもないので振り返るアマジーク。
    「後ろからバッサリやれば良かったのに」
    「貴様と一緒にするな」
    返された答えに、やれやれと言った感じでもう一つ溜息をついているアマジークはしかし、剣を向けられていても得物を出す様子は無い。
    振り向いたということはそのまま逃げるではなく戦うという事なのだろうが、〝砂漠の狼〟が無手での戦いをするという事は聴いた事が無い。得物を出すのに時間が掛かるのか
    、それとも無手で十分ということなのか、憶測は過ぎるが結局は憶測に過ぎず、己はただ自分が信ずる剣で戦うしかないというのなら余分の考えは捨てればいい。
    そういった気概で今にも飛び出しそうなデリク。それをぼんやりとした視線で見ているアマジーク。
    「このまま去れば、剣を向けることは無い」
    「それで引くような男だとでも思うのかィ、お坊ちゃん」
    そうか。
    それを合図に、デリクは己が身体を弾丸のように男へ目掛けて、射出された。

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